青山敦子さんと歩く、イングリッシュ・スパークリングワインの世界 - ナイティンバー

昨今のイングリッシュ・スパークリングワインの躍進が著しい、世界でも有数のワイン消費国であるイギリス。本連載では英国スパークリング専門誌 “Glass of Bubbly”のライターの経験を経て、ギリシャワイン・オフィシャル・アンバサダーも務める青山敦子さんをお招きし、イギリスが誇るイングリッシュ・スパークリングワインの魅力を皆様にお伝えしていきます。

第4回目であり本シリーズの最後の連載となる本記事では、イングリッシュ・スパークリングワインの王者であるナイティンバーを掘り下げていきます。

2016 年 3 ⽉末ロンドンを離れる間際に訪問してから、ちょうど７年。同じワイナリーに到着したのかと思うほど、王者は⼀層の⾵格を備えていた。中世に紛れこんだような美しい情景は変わらずだが、2016 年にワイナリーのすぐ隣にあった 93ha のゴルフコースを購⼊し、拡張された敷地は眩いばかりに⼿⼊れされていた。

ナイティンバーは、イングリッシュ・スパークリングワインのパイオニアであり、リーディングワイナリーである。1988 年に初代オーナーのモス夫妻が由緒あるナイティンバー・エステイトでシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエを栽培し始めた時は、誰しもがこの成功を想像していなったかった。2006 年にエリック・ヘレマがオーナーとなり、2007 年にシェリー・スプリッグスとブラッド・グレイトリックス夫妻が参画してからは、その勢いは加速。

シェリーが 2018 年にインターナショナル・ワイン・チャレンジ（IWC）で、シャンパーニュ地区以外で初、且つ⼥性ワインメーカーで初のスパークリングワインメーカー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、その地位を更に確固たるものにした。

写真・文　青山敦子

ナイティンバーはナイティンバーでしかない

ナイティンバーはナイティンバーでしかない。シャンパーニュを模倣しているのでも、⽬指しているのでもない。イギリスの地で、ナイティンバーらしさの表現を真摯に追求している。

それを実現するコアは、100％⾃社畑のブドウの使⽤である。そして、ナイティンバーでは所有する 135 の区画の全てが、均⼀に特別なのだ。全ての区画を⾃分たちで徹底的に管理し、全てが⾼い⽔準を持つと⾃負するだけあり、彼らにとっては 1988 年に植樹された最も樹齢の⾼い区画のブドウも、同列の⼀つの区画にすぎない。古⽊のブドウには特有の個性があるが、それが必ずしもスパークリングワインにとって望ましいものとは限らない。ヴィンテージによってはスパークリングワインにとって⼤切な軽やかさを損ねてしまうこともあるというのだ。もちろん、どの区画においても納得のいかないブドウは⼀切使⽤しない。100％⾃社畑の強みだ。

2017 年に完成したワイナリーには、グラヴィティー・フロー、６つのコカールと４０のステンレス・タンクが導⼊され、⼀層各区画の個性を際⽴たせた、より品質の⾼いワイン造りを可能にした。シャルドネとピノ・ノワールは極めてサイトに敏感に反応するので、きっちりと分けてワインを造る必要があるそうだ。

妥協なく最⾼のバランスを追求する

「ワイン造りにレシピはない。その年々で最⾼のバランスのワインを造るだけ」とシャーリーは⾔い切る。初めて会った時からこの姿勢はかわらない。潤沢な資産が、妥協することなく最⾼のバランスを追求することを可能とする。新設備の導⼊がより多くの明確なオプション（ベースワイン）を得て、彼⼥のキャンバスはより⾊彩豊かになった。MV ⽤のベースワインの数ともなれば、135 の当年のワインとリザーブワインがあるので、軽く 200 を超えることになるが、彼⼥は 100％フェアに評価するために必ずブラックグラスでテイスティングを⾏う。流⽯の徹底ぶりだ

ワインは⼈が造る

前⼈未到な賞を受賞し、イングリッシュ・スパークリングワインの頂点に君臨するナイティンバーを率いるのはさぞかしプレッシャーかと思いきや、「プレシャーはないわ。ナイティンバーはナイティンバーとして成すべきことをしただけ、素晴らしいチームと最善を尽くした結果だけなのよ」彼⼥はさらりと答える。

「⾃分が飲みたいワインと造っている」これも彼⼥が初めて会った時から⾔っていることだ。そして、⼈々が楽しそうにナイティンバーを飲んでいる光景をみることが何よりも嬉しいという彼⼥は、⼼からワイン造りを楽しんでいる。

「⽇々最⼤限の努⼒をしているだけ。ゴールはきめていないわ」と彼⼥から気負いは感じられない。ただ、この⾔葉からは彼⼥の⾃信が垣間⾒られる。「場所や⼟壌が違えば異なったワインになるものだけど、同じブドウからでも違った⼈が造れば異なったワインになる。やっぱり、造る⼈のパーソナリティが表現されるわね。もし私がナイティンバーを去れば、ナイティンバーは違うワインになるでしょうね」。

完璧な環境で完璧なワインを造る英国王者のワインには、強くしなやかな彼女のパーソナリティーが光る。

写真・文　青山敦子

ある意味ニューワールドである
イギリスの変貌は誠に⾯⽩い。

その⼟地⼟地、
ワイナリーによって個性が異なり、
多様性が進んでいる。

今後、間違いなく⾼品質ワイン⽣産国の
⼀軍メンバーとして
興味深い産地となるだろう。

写真・文　青山敦子

蔵元の名を知らしめたシャンパーニュ顔負けのブラン・ド・ブラン

BLANC DE BLANCS 2014 NYETIMBER

ブラン・ド・ブラン 2014 ナイティンバー

このブラン・ド・ブランは蔵元の名を一躍世に知らしめるきっかけとなった1本で、5年もの瓶熟を施してリリースされた2014年は、リンゴや桃を思わせる華やかさとブリオッシュや焼き菓子のような香ばしさが重なりあう豊かなアロマに、熟したレモンやグレープフルーツ、オレンジのような芳醇さと爽やかさを兼ね備えた果実味に、凝縮した旨味と穏やかな石灰のニュアンスが重なり、口の中いっぱいに広がり、余韻には滑らかな酸味が伸びて長い余韻を生み出しています。この味わいは、シャンパーニュの有名メゾンが生み出すブラン・ド・ブランと比べても全く引けを取らない素晴らしい味わいで、この蔵元がイギリスという枠組みのみならず、圧倒的なまでの高い評価を得ていることも納得させられるほどです。

希望小売価格 16,500円（税込）

生産国	イギリス
ワインタイプ	発泡性（白）
ぶどう品種	シャルドネ
生産者	ナイティンバー

---