青山敦子さんと歩く
イングリッシュ・スパークリングワインの世界

ガズボーン・エステート

昨今のイングリッシュ・スパークリングワインの躍進が著しい、世界でも有数のワイン消費国であるイギリス。本連載では英国スパークリング専門誌 “Glass of Bubbly”のライターの経験を経て、ギリシャワイン・オフィシャル・アンバサダーも務める青山敦子さんをお招きし、イギリスが誇るイングリッシュ・スパークリングワインの魅力を皆様にお伝えしていきます。

第3回目となる本記事では、英国のワインシーンを牽引するガズボーンを掘り下げていきます。

ブドウ栽培の北限地でヴィンテージに対峙
⾃社畑のブドウの魅⼒を最⼤限に表現するガズボーン

Gusbourne Estate

⾬のロンドンマラソンの翌⽇、イギリスらしい曇り空の朝。2013 年に建てられたスタイリッシュなワイナリー併設のテイスティングルーム”The Nest”でガズボーンのグローバル・ブランド・アンバサダーのローラ・リース・マスター・ソムリムが出迎えてくれた。

イギリス⼈らしい穏やかな⼝調で話す彼⼥が、ガスボーンに出会ったのは、ロンドンのチズウィックにあるミシュランの星付きレストラン『La Trompette』でヘッドソムリエをしている時というから驚いた。彼⼥の働いていた時期にも何度も通った店だ。

ガズボーンは北緯 51 度、イギリス最⻄端のケントのアップルドアに居を構える。ドーヴァー海峡を渡ればすぐそこにフランスがあり、後3時間も⾞を⾶ばせばシャンパーニュに到着。海辺にたつ⾵⼒発電の⾵⾞が遠⽬に⾒える。それだけ海⾵が強いということだろう。ワイナリーの周りにあるケントの畑から海までの距離はわずか 10 キロ。そのせいなのか、ガズボーンのワインの余韻にはいつも塩味を感じる。

写真・文 青山敦子

より深く知る

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ガズボーンの強み ~ 100%⾃社畑

ガズボーンの⼀番の強みは 100%⾃社畑のブドウだ。ガズボーンのワインはケントとウエスト・サセックスの畑、そして、バーガンディー・クローンとシャンパーニュ・クローンの異なった個性の集⼤成である。

ガズボーンの強み ~ 2つの異なる畑

2004 年に初植樹されたアップルドアのケントの畑と、2013 年に購⼊し植樹されたウエスト・サセックスの畑は⼟壌と標⾼が異なる。ケントの⼟壌は粘⼟と砂だ。寒冷なイギリスではこの粘⼟の⼟壌がポジティヴに働くという。ケントはイギリスの中で最も暖かく乾燥した場所の⼀つだが、更にこの粘⼟の⼟壌が暖かさを保持し、⽇照の恩恵を受けた南向き斜⾯の畑ではブドウが完熟する。海抜から最⼤で標⾼ 40 メートルのなだらかではあるがその傾斜と、排⽔通路が完備されているため、訪問した⽇は前⽇が⾬だったので下部はぬかるんでいたが、畑の上部の⼟は乾いていた。

⼀⽅、セブンシスターズの剥き出しになった⽩亜の岸壁から程近いウエスト・サセックスの畑の⼟壌はチョーク質である。そして、標⾼は 45 から 98 メートルとより⾼くより冷涼だ。通常、収穫時期は⼀週間から10⽇ほど遅くなる。異なった⼟壌と標⾼の⼆つの畑を獲得したことで、ガズボーンは⾶躍的に可能性と将来性を拡⼤させた。ケントのブドウはより芳醇で⾼い果実の凝縮度を持ち、ワインに深みと厚みを与え、ウエスト・サセックスのブドウはより繊細な果実⾵味と⾼い酸味を持ち、ワインにフレッシュさを与えるという。温暖化が進んだとはいえ、イギリスは決して暖かい国ではない。より安定して完熟したブドウを供給してくれるケントの畑の果たす役割は⼤きい。

⾃ら選択した台⽊とクローンのみ

このケントとウエスト・サセックスの畑は、単に 100%⾃社畑であるということだけでなく、100%彼ら⾃⾝で選択した台⽊とクローンで構成されている。そのクローンの選択で、興味深いのはバーガンディー・クローンとシャンパーニュ・クローンをほぼ半々で使⽤している点だ。より⾼い酸味とフレッシュさを与える傾向にあるシャンパーニュ・クローンと、より⾼い熟度と豊かな凝縮度を与える傾向にあるバーガンディー・クローンの異なった個性を、畑同様その違いを巧妙に活⽤している。

ガズボーンの強み ~ ヴィンテージ・スパークリングのみ

⼀番の強みの 100%⾃社畑のブドウを最⼤限に表現するために、ガズボーンはヴィンテージ・スパークリングワインしか造らない。且つ、寒冷なイギリスにおいて、よりリッチで複雑さを表現することを⽬指す。この毎年の挑戦を⽀えるのが、より安定して完熟するケントの畑とバーガンディークローンの存在、そして彼らのクラフトマンシップだ。

ブレンディングには、ヘッドワインメーカーのチャーリー・ホランドを筆頭にローラも加わり、クラシックキュヴェに⾄っては、300 近いベースワインをブラインドでテイスティングを続け、最⾼のブレンドを決めていく。且つ、彼らは科学的データも疎かにはしない。最終的な味わいを調整するドサージュは、0g/ℓから 10 g/ℓまで 10 段階全ての中から最⾼のものを選択するというように、あくまで精細、ロジカルでスマートだ。

写真・文 青山敦子

更なる挑戦

New challenge

ガズボーンは⾃社畑のブドウの魅⼒の最⼤限の表現を追求し、しなやかに形にしていく。ブラン・ド・ブランとブラン・ド・ノワール各2つの単⼀畑キュヴェ、そして、ガズボーン初のプレステージキュヴェ「51 Degrees North」が誕⽣した。世界最⾼峰に値する⼀本にはその名に⾃信が現れる。ガズボーン、北緯 51 度から極上のワインを⽣みだし続ける。

写真・文 青山敦子

おすすめワイン

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シャンパーニュ愛好家も驚くこと間違いなし!
イギリスの新たな可能性を感じさせるブラン・ド・ノワール

BLANC DE NOIRS 2018 GUSBOURNE ESTATE

ブラン・ド・ノワール 2018 ガズボーン・エステート

過去5 年間に3 回もEnglish Wine Producer of the Year を獲得し、英国のワインシーンを牽引する存在となったガズボーン。2010年にファーストリリースが世に出回るやいなや、瞬く間に各方面から賞賛され、2012年のロンドン・オリンピックの開会パーティーや、国家賓客のバッキンガム宮殿訪問の際にも振舞われるなどの実績も有しています。

このブラン・ド・ノワールは近年リリースされ始めたものですが、味わいはブラン・ド・ブラン同様、世界的に見てもハイレベルな水準にあると思われる程の抜群の出来。グラスに注ぐと黄金色に輝き、リンゴ、洋梨、白桃などの豊潤で熟した果実のアロマは、赤果実やフローラルな花がアクセントとなって香り、口に含むとレッドカラント、ラズベリー、レッドチェリーの香味に、バラとジャスミンの華やかなニュアンスや甘やかなスパイス、ブリオッシュやアップルパイの香りが幾重にも重なって凝縮感と複雑な印象を感じさせる味わいが、長い余韻の中で優雅に広がっていきます。この味わいは、シャンパーニュ屈指のピノ・ノワールを育むモンターニュ・ド・ランスの特級で生み出される数々のブラン・ド・ノワールを比べてみても何ら引けを取らず、イギリスがいかに大きなポテンシャルを持っているかということや、ハイレベルなワインを生み出しているかということをまざまざと見せつけるほどです。

会員価格 10,450円(税込)

希望小売価格 12,100円(税込)

生産国イギリス
ワインタイプ発泡性(白)
ぶどう品種ピノ・ノワール
生産者ガズボーン・エステート

40ヵ月以上の瓶熟を施すフラッグシップ、まさに傑作です!

BLANC DE BLANCS 2017 GUSBOURNE ESTATE

ブラン・ド・ブラン 2017 ガズボーン・エステート

ブラン・ド・ブランは蔵元のフラッグシップとなるキュヴェで、厳しく選果された最良のブドウのみを用いて40ヶ月以上もの瓶熟を施してリリースされています。麦わらやトーストを思わせる上品な香ばしさをまとった柑橘やリンゴのアロマに、ピンクグレープフルーツやレモンシャーベットのような甘酸っぱく凝縮感のある香味とトーストのニュアンスが折り重なって、しっかりと重厚感のある味わいが口の中を満たしていきます。余韻にかけて溌剌とした酸味が伸びて味わいを引き締めており、まさにブラン・ド・ブランの傑作だと言っても過言ではないほどのレベルの高さを感じさせてくれます。

会員価格 9,405円(税込)

希望小売価格 10,824円(税込)

生産国イギリス
ワインタイプ発泡性(白)
ぶどう品種シャルドネ
生産者ガズボーン・エステート

高い評価を受ける絶品ロゼ、様々なシーンで大活躍します!

ROSE 2018 GUSBOURNE ESTATE

ロゼ 2018 ガズボーン・エステート

このロゼは3品種を用い、30ヶ月以上の瓶熟を施してからリリースされるもの。淡く美しいサーモンピンクの色調を持ち、リンゴやチェリー、白桃の香りが優雅に漂います。この蔵元らしい骨太さもありながら、ロゼらしく赤い果実のチャーミングな香味が心地よさをも感じさせる秀逸な仕上がりで、様々なシーンでお楽しみいただけるでしょう。2018年のこのワインは『シャンパーニュ&スパークリングワイン・ワールド・チャンピオンシップ2022』にて『ベスト・イン・クラス・イングリッシュ・ロゼ』を獲得しています。

会員価格 8,987円(税込)

希望小売価格 10,450円(税込)

生産国イギリス
ワインタイプ発泡性(ロゼ)
ぶどう品種シャルドネ59%,ピノ・ノワール23%,ムニエ18%
生産者ガズボーン・エステート

イギリスを訪れるセレヴをも魅了するガズボーン、骨太な味わいをお楽しみください

BRUT RESERVE 2018 GUSBOURNE ESTATE

ブリュット・リザーヴ 2018 ガズボーン・エステート

 蔵元のスタンダード・キュヴェにあたるブリュット・リザーヴは、シャルドネを主体にピノ・ノワールとムニエをブレンドし、24ヶ月以上の瓶熟を施してリリースされます。青リンゴやレモン、ピーチなどの様々なフルーツに、蜜やトーストのニュアンスも入りまじった豊かな香りがふんわりと立ち昇り、柔らかなタッチからギュッと凝縮した果実の香味と旨味が繊細な酸味と一体となって骨太な味わいをもたらします。蔵元のスタイルを如実に表した、素晴らしい仕上がりの1本です。

会員価格 7,106円(税込)

希望小売価格 8,250円(税込)

生産国イギリス
ワインタイプ発泡性(白)
ぶどう品種ムニエ56%,シャルドネ35%,ピノ・ノワール19%
生産者ガズボーン・エステート

イギリスが⽣み出す最⾼品質のスパークリングワイン

本記事でご案内中のガズボーンは、YEBISU WINEMART ONLINEでお取り扱いしております。
ご興味がございましたら是非お試しください。

青山敦子

Atsuko Aoyama

WSET®Level 4 Diploma
WSET®Certified Educator (Level1,2&3 公認認定講師)
WSET®Level 3 Sake
IWC インターナショナル・ワイン・チャレンジ・ロンドン Associate Judge
ギリシャワイン・オフィシャル・アンバサダー
2018年 Wines of Greece World of Greek Wine Program 最優秀賞
ギリシャワイン認定講師 (EDOAO)
German Wine Academy認定講師
J.S.A. 認定ワインエキスパート

2008年ロンドンでWSETに出会い、ロンドン本校にて、ディプロマコースを猛勉強の末1年半で取得後、WSETで試験採点官、英国スパークリング専門誌 “Glass of Bubbly”のライターの経験を経て2016年に帰国。

2018年 Wines of Greece 主催のWorld of Greek Wine Programで一位となり、現在ギリシャワイン・オフィシャル・アンバサダーとして、定期的にギリシャを訪問し、プロフェッショナル向け、そして愛好家向けにギリシャワイン・セミナーを行う。

その他、WSET講座、シャンパーニュ委員会講座、イングリッシュ・スパークリング講座など、幅広くワインの世界を伝える。